マスターバッチ使用時における色ムラ改善技術

低圧損・低滞留構造を実現したプラムチップノズルの適用事例
※本記事は『プラスチック』2026年9月号に掲載された記事を、許諾を得て転載しています。
1.はじめに
当社は射出成形用金型内にシステムを組み込むことで、無駄なスプルーやランナーを出すことなく、高品質な成形品を作り出すことができるホットランナーシステムのメーカーである。 そのため顧客のほとんどが成形メーカーと金型メーカであり、双方からさまざまな悩みごとをヒヤリングし、それを開発に役立ててきた。
2007年、ある自動車部品成形メーカーより「あるメーカー製のミキシングノズルを使用していて、混錬性は満足している。ただ高額でなかなか横展開しづらいのと、色換え性が悪く、メンテナンスするにも特殊構造のためメーカーへ戻さないといけないので、使い勝手があまり良くない。当社で汎用性が高く、かつ安価なミキシングノズルを作れないか?」との相談があった。
調べてみると、ほかの使用ユーザーも機能面は高く評価しているものの、同じような悩みを抱えていることが分かった。 そこで「ユーザー側で簡単にメンテナンスができる」、「色換え性が良く、滞留によるヤケも防ぐ」という、主に2点に注力したミキシングノズルの開発に着手した。
2.プラムチップ
2-1 プラムチップノズル
まずメンテナンス性ついに てだが、これは写真1 のように、先端が取外し可能とっなている成形機ノズルに対応するチップを作ることとした。これによりノズル先端を取り外し、中のチップを取り出せば、容易にメンテナンスが出来ると考えた。
また色換え性とヤケについては、滞留によるものが大きいため、 複雑な構造とせず、らせん状流路を 使うことで、滞留箇所を最小限に抑える構造とした。
これらの条件に加え、もちろん混練性も満足するもるのでなくてはならないため、先の成形メーカー協力のもと何種類もの形状を製作、トライを繰り返した結果、優れたメンテナンス性、低滞留構造および混練性を兼ね備えたチップを完成させた。 そがれプラムチップである(写真2)。
プラムチップは最大外径Φ17mm、全長が40mmと非常にコンパクトながら、その流路内で計3回の樹脂の分散と合流を繰り返すことで、マスターバッチの混練を促す仕組みとなっている。
プラムチップノズルは、各成形機メーカーのネジに部に合わせたボディと、プラムチップが入るよう加工されたノズル先端部、そしてプラムチップから構成される。 プラムチップが入るため、強度上、ノズルボディはΦ40mm 以上が必要だが、それ以上であれば現在のノズルに合わせた外径で製作可能なため、現行のヒータ・センサも使用することが可能となり、簡単に導入することができる。
また、もう1 段上の混練性が必要となった場合、ノズルボディとノズル先端部の間にアダプターを追加することで、プラムチップを2個組み込むことが可能となる(写真3)。 導入時はプラムチップ1個仕様とし、成形トライの状況を見て後から追加することができるのである。導入後も要求品質に応じて混練性能を調整できるのが大きな特徴である。
写真1
写真2
写真3
2-2 プラムチップ入りスプルーブッシュ
プラムチップは前述したように非常にコンパクトなため、ミキシングノズルとしての使い方以外にも応用されている。その1つがプラムチップ入りスプルーブッシュである(写真4)。
ホットランナーシステム利用時において、ミキシング機能が必要となる金型のスプルーブッシュにプラムチップを組み込むことにより、成形機のノズルを付け替える必要が無くなり、段取り時間を大幅に削減することが可能となる。
ゲートが複数の時に使用されるマニホールドブロックのスプルーブッシュだけでなく、当社のホットランナー「プラゲートシステム」の1点ゲート時にも適用可能である(第1図)。

写真4

第1図
2-3 プラムチップ入りシャットオフノズル
当社はホットランナーシステムの技術を流用した、シャットオフノズルもラインップしている。
シャットオフノズルは成形機の先端に取り付け、オープンノズル使用時に発生する、糸引きやたれ落ち、またこれらに起因するコールドスラッグや、糸引きやたれ落ちを防ぐために行うサックバックによるシルバー不良など、さまざまな成形不良を解消するためのノズルである。
第2図のようにシャットオフノズルの後端にプラムチップを組み込むことで、糸引きやたれ落ちを防ぎつつ、色ムラの解消も同時に行うことが出来る万能ノズルとなる。 これはプラムチップのコンパクトさを活かした応用例の一つである。
第2図
3.プラムチップノズルによる効果
3-1 マスターバッチ混練
ここからはプラムチップノズルの性能自体を見ていく。第1表はある自動車部品成形メーカーが、オープンノズル、他社製ミキシングノズル、プラムチップ(2個使用)ノズルの比較テストを行った結果である。
まずはマスターバッチの混練効果について見ていくが、オープンノズルは当然、背圧などの成形条件で混練効率の向上を図っていくしかなく、ノズルによる混練効果は皆無である。
次に他社製ミキシングノズルであるが、構造としては内部に180°捻じれた羽根状の特殊構造(エレメント)を複数段配置し、樹脂を強制的に分割→捩じる→合流させる構造となっている。 一般的に5~7段程度のエレメントを有し、高い混練性能を発揮することから、市場でも高い評価を得ている。
一方でプラムチップノズルは、樹脂を捩じるのではなく分散・合流を繰り返す構造であり、その回数も他社製ノズルに比べて少ない。 同成形メーカーの評価では、混練性は十分実用的なレベルであるものの、混練性能そのものは他社製ノズルには及ばないとの結果であった。
しかしながら、実際の成形現場においては要求される混練性能を十分満たしており、多くの用途で色ムラ改善効果を得ることができている。
第1表
3-2 圧力損失の違い
次にミキシングノズルの圧力損失についてである。
混練性と圧力損失は表裏一体であり、他社製ミキシングノズルはエレメントの効果により高い混練性を有する一方、その複雑な構造の影響で圧力損失は大きくなってしまう。 この高い圧力損失は充填効率の低下だけでなく、樹脂への負荷増大にも繋がるため、シルバーや糸引きなどの不良発生要因の一つとなる。
対してプラムチップノズルは、チップが入っているためオープンノズルには劣ってしまうが、圧力損失の影響はそれほど大きくはない。
この成形メーカーの検証では、他社製ミキシングノズルでは、オープンノズル比で20%の圧力上昇が確認され、シルバーや糸引きに起因する成形品不良率は0.42%となっていた。 これをプラムチップノズルに変更したところ、圧力損失は7%へ、成形品不良率も0.01%と劇的に改善することができた。
当社社内においてもこれとは別に圧力損失のテストを実施している。 オープンノズルとプラムチップノズルで内部流路構造が違うため一概に比較できないが、オープンノズルに比べプラムチップ1個使用のノズルにおいては、圧力損失はほとんど認められなかった。 2個使用のノズルでは10%程度の圧力損失があるという結果であった。
3-3 低滞留構造による高い汎用性
最後に、プラムチップノズルの低滞留構造がもたらす高い汎用性について述べる。 ここでは汎用性の中でも、幅広い樹脂への適用性に着目する。
高い混練性の代償は圧力損失だけでなく、滞留が増えるということにも繋がる。 滞留が増えることによるデメリットで第一に挙げられるのが色換え性であろう。
この表を作成した成形メーカーとは別の成形メーカーであるが、他社製ミキシングノズルを使用していて色換えに苦労していた。 実例として350t成形機で色換えをする際、まずパージ材を2kg使用、その後成形材料であるナチュラルのPPやABSを約2kg、計4kgパージしないと色換えが完了できないというものであった。
これをプラムチップ1個使用のノズルに変更したところ、パージ材の使用は2kgから0.8kgへ減少、その後のナチュラルPPやABSのパージも2kgから1.2kgへ減少し、合計約2kg(重量ベースで50%減)の削減に成功した。
1度の色換えにつき約1,000円のコストカットということであったが、これは2019年のデータであることから、材料の値段が高騰している今では更なるコストカットを果たしていると思われる。
また滞留が増えるということは熱履歴が長くなるというデメリットもある。 このデメリットはヤケや黒点などの成形不良を引き起こしやすくするだけでなく、熱劣化しやすい樹脂には適用しにくいという弱点にも繋がる。
プラムチップノズルは低滞留構造により色換え性に優れ、ヤケや黒点の発生を抑制できる。その結果、汎用樹脂からエンプラ、透明材の淡色着色まで幅広い用途で使用することができ、高い汎用性を有するミキシングノズルと言える。
3-4 メンテナンス性
プラムチップノズルの大きな特徴の一つは、冒頭述べた開発思想にもある通り、「客先でもメンテナンスができる」という高いメンテナンス性である。 色換え性に優れたノズルではあるが、黒色→ベージュなどの濃い色から淡い色への色換え時などは、メンテナンスをしてしまった方が早い場合がある。 また時には不注意によりノズルのヒーターを入れたまま放置してしまい、樹脂を炭化させてしまったためにメンテナンスが必要となってしまうこともある。
このような時は、まず成形機からノズルを取り外したのち、ノズル先端部とボディを分離する。そうするとプラムチップはノズル先端部かボディ部に残った状態となっているため、プライヤーなどを使用しプラムチップを取り出す。
プラムチップはバーナーで周りの樹脂を溶かしながら、ウエスで拭ったり、場合によってはカッターナイフで樹脂カスを削り取ったりして綺麗にする。あとはノズル先端部とボディ部流路の樹脂を取り除き、樹脂が残っていないことを確認したら組付けて終了である。
慣れてくれば10分程度で終了してしまう。 このメンテナンス性により成形機を止めている時間やコストロスを最小限に留めることができるのである。
4.おわりに
ここまで主に他社製ミキシングノズルとの比較を中心に、プラムチップノズルの特長について述べてきた。プラムチップノズルは、「低圧損」「低滞留構造」「容易なメンテナンス」という大きな強みを有している。
一方で、単純な混練性能という観点では、現時点では他社製ノズルに一歩譲る部分もある。
現在当社では、特に混練性能の向上に重点を置いた次世代モデルの開発を進めている。これらの強みに加え、さらに高い混練性能を実現することで、成形メーカーにより大きな価値を提供できるものと考えている。
本社営業部 部長 安藤陽介 著






