ヒケ×ホットランナー|技術的対策 品質改善ポイント

成形不良『ヒケ』の原因と技術的対策
|射出成形における品質改善の実践ポイント
ヒケとは?
ヒケとは、射出成形品の表面に生じる凹みやくぼみのことです。
特に肉厚部やボス・リブの周辺に発生しやすく、外観不良だけでなく、寸法精度の低下や機械的強度の弱体化、さらには製品機能の低下を招きます。
量産現場では頻出する成形不良のひとつであり、設計・成形・金型それぞれの視点から多角的にアプローチする必要があります。
ヒケの主な原因
1. 不均一な冷却速度
厚肉部は冷却が遅れやすく、内部収縮が表面を引っ張ることでヒケが形成されます。特に樹脂の固化速度が部位ごとに異なる場合、外観に顕著な凹みが現れます。
2. 保圧不足・保圧時間の短さ
成形時に収縮を補う樹脂が十分に供給されないと、空洞が残りヒケとなります。
特にピンゲートなどのゲートサイズが小さい場合、保圧が完了する前にゲート部が固化してしまい、保圧がかからなくなってしまうことが典型的な原因です。
またダイレクトゲートの場合でも、スプルーは外周部から固化していき、樹脂が流れていく径は小さくなっていくため、保圧はかかりにくい状況となります。
3. 不適切な金型設計
- 肉厚の偏り
- リブ・ボスの配置不良
- 冷却回路の不均一
これらが複合的に作用し、局所的な収縮を助長します。
4. 材料特性
ポリプロピレンやABSなど収縮率の高い樹脂はヒケが出やすく、逆にポリカーボネートやナイロンは比較的安定しています。ガラス繊維などのフィラーを添加することでヒケ抑制効果も期待できます。
5. 成形条件の不適正
射出速度・金型温度・冷却時間などのパラメータが不適切な場合、樹脂の流動性や冷却挙動が乱れ、ヒケが発生します。
ヒケの具体例
1. 設計段階での対策
- 肉厚を均一に設計する
- リブやボスの配置を工夫(クロスリブやドーム接続など)
- 厚肉部には肉盗み加工や中空構造を採用
2. 成形条件の最適化
- 保圧時間をゲートシール時間以上に設定
- 射出速度・圧力プロファイルを調整し、均一充填を確保
- 金型温度を適正化し、冷却速度を均一にする
- 冷却時間を増加させ凝固を均一化
3. 金型設計の工夫
- ゲート位置を厚肉部に近づけることで樹脂供給を安定化
- 厚肉部に専用インサートを設ける
- CAE解析による事前検証で潜在リスクを最小化
- ホットランナー化することにより保圧をかかりやすくする
よくある質問(FAQ)
Q. ヒケを放置するとどうなりますか?
A. 外観不良だけでなく、寸法誤差、強度低下、最終製品での機能不良やクレーム増加につながります。
Q. どんな材料がヒケを抑えられますか?
A. ポリカーボネートやナイロンなど収縮率の低い樹脂、あるいはガラス繊維やタルクなどフィラーを含む樹脂が有効です。
まとめ|ヒケ対策は「設計・成形・金型」の三位一体で
ヒケは単なる外観の問題ではなく、製品品質の根幹に関わる技術課題です。
設計段階での予防、成形条件の最適化、金型設計の改善を組み合わせることで、安定した品質を確保できます。
フィーサの技術情報を活用し、現場での改善と品質保証を強化していきましょう。
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